ATF交換その後 ~ E38 750iL
出光製ATFでATに問題が生じたことは前の記事に書いたとおりです。今回はATF交換のその後について、ATFフィルター交換を含めて作業の細かい内容を改めてレポートします。結局、更に2種類のATFを試すことになってしまいました。
取り敢えずは出光製ATFの排出からの作業ですが、ATFを排出する前に必ず注入口を確かめて下さい。注入口から確実にATFを入れられることを確かめずにいきなりドレンしてしまうと、もしも手持ちの工具が足りなったりしたら積載車コースになってしまうかも知れません。
このトランスミッション(ZF 5HP30)の場合、ATFの注入口はオイルパンの真ん中あたりにある窪みの中にあります。プラグには17mmの六角穴で回しますが、プラグが奥まっているのと、かなりのトルクで締まっているのとで、普通のL型六角レンチでは緩めることはできないと思います。
私は上のようなセット(600mmブレーカーバー)で何とか緩めることが出来ました。1/2インチの工具セットに付属して来る300mmくらいの固定ハンドルでは緩めることが出来ませんでした。作業される場合は十分にお気を付け下さい。
注入口を緩めたらドレンです。オイルパン右前方にドレンがあります。プラグは14mmの六角で締まっています。排気管が邪魔をして普通のL型六角レンチは入りそうにありません。私は冒頭の写真のように、14mmの六角ソケットを分解して六角棒の部分だけにして、14mmのメガネをかけて回しました。ここもかなりきつく締まっています。
オイルパンから普通に抜けるのは4Lくらいです。今回は出来るだけ多く抜き取るため、一旦オイルパンを空にした後、エンジンをかけてセレクターレバーで各ギアを選び、再度オイルパンからATFを抜き取りました。約1L程余計に抜けるようです。入れたばかりなので当たり前ですが、抜いたオイルに特に異常は感じませんでした。
オイルフィルターを交換するためオイルパンを取り外します。ボルトの数が多いのでトルクスビットを電動ドリルに銜えて緩めました。上向き作業なので手で回すのはかなり疲れると思います。
ガスケットは固着していませんでしたが、オイルパンが浅い形状のため、傾けるとかなりの量のオイルが垂れて来るので十分に注意してください。無塗装のガレージや地下ピットで作業するときには床に必ずシートを敷くことをお勧めします。
取り外したオイルパンとオイルフィルターです。左半分は拭いた状態。9万キロ弱の走行距離相応なのかどうか分かりませんがかなりの汚れです。巷で言われるATF交換時の「ゴミの巻き上げ」によるトラブルというのも分かるような気がします。
鉄粉除去用マグネットです。どこから出てくるのでしょうか。元の形が分からないほど鉄粉が付着していました。
ウエスで拭いて元の形に。オイルパンもマジックリンで綺麗に掃除しました。
ピンボケですが新しいATFフィルターです。スポンジ状のフィルターが入っているようです。E32のATFフィルターは単なる金属メッシュのスクリーンだったので溶剤で洗ってしまえば交換までは必要無い感じでしたが今回の場合、出来ることなら交換して置いた方が良さそうです。純正品はFILTRANの名前が入っていました。
接触部をブレーキクリーナーで拭き、ガスケットにごく薄くシール剤を塗ってオイルパンを取り付けます。漏れると厄介ですので、電動ドリルで適当に締め付けた後、手で増し締めしておきます。
出光製ATFに換えて今回使ったのはカストロールの「ATFマルチビークル」です。
カストロールのアナウンスによると、ESSOのLT71141と互換性があるということになっています。ペール缶での取り寄せで1万8千円。ただ、後で気が付いたのですが、日本で取り寄せたこの「マルチビークル」が、上のアナウンスにある海外の「Castrol Multivehicle ATF」と同じものなのかどうかは不明。そもそもこの製品、カストロールジャパンのホームページには載っていなのです。
注入作業です。レベルゲージを持たないこのATの場合、ATFの注入には若干の手順があります。
まず、トランスミッションの温度を十分に下げてから注入すること。BMWの指定温度は30~50℃です。次に、エンジンアイドル、エアコンオンの状態で注入すること。ATFポンプがAT内部、トルクコンバーターを十分にATFで満たした状態でレベルを見る必要があります。(これは他の車でも同じですが)
この状態でATF注入口からATFを注入して行き、セレクターレバーを全てのポジションに動かした後で注入口からATFが溢れてきたらそれが正しいレベルです。(詳しくはこちら)
あとはオイルパンのプラグをしっかり締めて作業完了です。
次の朝、さっそく試運転(出勤とも言う(笑))に出かけます。
今回はスペック不明の出光製ATFではなくメーカーが明確にLT71141との互換を謳ったATFを入れたわけですから心配なし。
と、思ったら…!
なんと、出光製ATFよりもっと悪いじゃありませんか。
中負荷以上では1速→2速、場合によっては2速→3速でもATがスリップ制御を行っていると思われるタイミングで「シュイーン」とクラッチが滑っているような音がします。
料金所からの全開加速など怖くてできない状態になってしまいました。
一方、出光製ATFで発生していた、長い緩い下り坂でのエンジンブレーキでATのロックが周期的に切れてエンジンの回転が上下するという症状は無くなりましたが、何れにしても正常ではありません。
何度かATFのレベルを何度か確認したりしたのですが、結局、私としては前の出光製ATFと同じくこのATFでも、その粘度摩擦特性や流動特性と圧力コントロール制御とが合っていないのではないかという結論に達しました。
そして…
はい。
ESSOのLT71141です。
素直にディーラーで買いました。1Lで約4千5百円。高い油です。しかしATを壊してしまうよりは失敗を認めて引き返した方がはるかに良いと気付きました。20L買ったのではなく、この容器で5Lだけ貰ってきたのですが。
そして、このATFに換えたとたん、あれだけ出ていたATの怪しい音と症状はどこかに消えてしまいました。さずが純正というか何というか。やはり「互換品」と「指定品」は違うのですね。ATがATFに要求する特性がこれほど細かいとは全く知りませんでした。
E32のときは純正部品に拘り、もちろんATFもディーラーで買って入れていたのにE38では安く上げようとズルをしたのがいけなかったようです。NM35ステージアでは出光製のATFで何の問題も無かったので油断しました。
今回の教訓。
「BMWの警告ラベルを無視しないこと!ATを壊しても良いと思うのでなければ、数千円や数万円をケチって純正以外のATFを入れないこと!」
「純正ATFへの出費を惜しむくらいならATFなど交換しようとしないこと!」
「互換性の表示を無闇に信用しないこと!」(本当の互換品もあるのだと思いますが)
我儘を言えば、何故他のATFを入れてはいけないのかもっと詳しく書いておいて欲しかったとは思います。(笑)
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コメント
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そういうオチ?でしたか。
kogeもオイル交換くらい自分でしなきゃ!と思いバイクのオイルを交換しようと思ったのですが、ちょっと怖くなりました(笑)。
とはいえ車とバイクは違うし、ATとは全くデリケートさ加減が違うので関係ないですね。粘度等をメーカー指定の物と同じにしとけば間違いないでしょう。
あと二輪用と四輪用を間違えない事(笑)。
投稿: koge | 2011年10月22日 (土) 00時27分
kogeさんコメントありがとうございます。
オチを感じていただけて何よりです。(笑)
今回は、メーカーがダメだと言っていることをやった結果なので、まあ当たり前と言えば当たり前です。
エンジンオイルにしても、メーカー指定のものを入れる分には問題ないのではないでしょうか。自分でいじると愛着も湧きますし。
投稿: otto | 2011年10月25日 (火) 13時06分