不可解な自動車保険の見積もり(3) ~ 調査編
怪しい保険の続きです。
「記名被保険者」の適格性について保険約款等の根拠に基づく説明を求めていたにも関わらず外交員さんからの回答が要領を得ません。
そこで、何故彼らが保険料率や割引の算定基礎となる「記名被保険者」について、保険会社のHPにある「主として運転される人、あるいは車を管理している人」という記載と異なり「その車を所有ぜず管理せず、かつ全く運転もしない人を記名被保険者にしても保障はされる」と主張するのかを調べるため、まず自分で「普通保険約款」を読んでみました。
約款を読んで発見したのは告知に関する下の規定。
(条文は一部を省略しています。)
「第○条 ご契約の手続き事項」
「ご契約者または記名被保険者は、保険契約締結の際、告知事項について、事実を正確に告げなければなりません。」(告知義務)
記名被保険者は車の所有、使用状況によって決まるものですから、所有、使用状況を告知することによって保険会社がその適格性を判断するものと思います。
「第△条 正しく告知しなかった場合」
「1.契約者または被保険者が、告知事項について故意または重大な過失より事実を告げなかった場合、または事実と異なることを告げた場合には、保険契約を解除することができる。」(告知義務違反による契約解除)
はい、嘘を言って契約してはいけません。当たり前の規定ですね。
「2.ただし、その解除権は下の場合には行使しない。」
おお、例外規定がありました。こういうところが大事なのです。(以下の条項順不同)
「① 1.の事実が無くなったとき。」
状況の変化によって事実でなかったことが事実となった場合ですね。
「② 保険会社が保険金を支払うべき事故の発生前に契約者が書面で訂正を申し出て、会社がそれを承認した場合。」
正式に告知事項の訂正を申し出て会社が承認した場合。少々甘いような気もしますが、まあ保険会社がそう言うのなら良いのでしょう。
「③ 保険会社が1.による解除の原因があることを知った日から1カ月を経過した場合、または保険契約から5年を経過した場合。」
保険会社が手続きを放置した場合には保険会社が悪いということです。
問題は次の条項です。
「④ 保険会社が、保険契約締結の際に、1.の事実を知っていた場合または過失によりこれを知らなかった場合。これは、保険契約締結を代理に行う者が、事実を告げることを妨げた場合、事実を告げない、または事実と異なることを告げることを勧めた場合を含む。」
読んで、なるほどと思いました。
先方が頭に描いているのはこの条項の運用なのだろうなと。
この条項は、「保険契約の際に、保険代理店が、過失または故意で契約者の情報を操作(聞かなかった、聞かなかったことにする、言わせなかった等)した場合には契約解除を行わない」という意味です。
つまり、私が疑問を持って先方に問い合わせる前に保険契約をしていれば「保険代理店が(故意または)過失により告知事項の確認をしなかった」ことになり、契約解除条件に非該当。問い合わせた後に契約した場合でも、「保険会社は事実を知っていた」ので、解除条件に非該当。
何れの場合であっても、事故の際には 約款上に従って「契約解除権は行使されない」=「保障『は』される。」 ということです。
極端な話、保険代理店が適当に保険契約を成立させてさえしまえば、「告知事項」がどのように取り扱われていようとも「保障『は』される。」わけです。
しかし、常識的に考えてこのような取り扱いは不適切でしょう。例えば、「このような勧誘を受けているが保険業者として問題はないか」と金融監督庁(?)に連絡すれば、「全く問題ない」とは言わないはずです。
おそらく件の保険外交員さんは、きっと「トレーニー」の指導(笑)でこのあたりのことを知っていて私に対応していたのだと思います。だからこそ、「お勧め『は』しない。」 と書いたわけです。
そして、見積り提示当初の 「お安く『できました』。」 という言葉は、このようなテクニック(?)を駆使して 「なんとかできた」 という意味だったのだと思います。
しかしなんと心が素直で正直な外交員さんなのでしょう。裏にある事情が全て言葉ににじみ出てしまっていたようです。
疑い深い私のような人間を相手にするならもう少しポーカーフェイスにしないといけません。(笑)
とはいえ、こちらとしては「保障『は』される」のであれば、安い保険料で契約できるなら悪い話ではありません。この話に乗っても良いのかどうか考え(?)…
やはり難あり、というか当然ダメ、という結論に達しました。(笑)
そもそも、色々な事実関係を前提として行われる契約というものは、正しい条件を守って契約されていない場合、特に関係する事態が深刻で扱う金額が大きくなればなるほど、素人には決して想像することのできない理屈でその契約の効力が失われる可能性があるものです。
例外規定が思ったように運用されない場合、万一の巨額賠償責任(人身死亡事故等)に備えるために契約する自動車保険について、例えばたった1~2割の保険料(年間1万円程度)をケチったために、結果として事故の際に保険を使えないことで保険料の全額を無駄にしたうえに巨額(数千万円~数億円)の賠償責任を自分で負う事態が発生する可能性がある場合、賭けることになるのは節約したつもりの保険料ではなく、自分の人生です。
たった数万円の保険料に釣られてこんな賭けに出るのは正気の沙汰ではありません。
保険と言うのは、万一のことに対応するものなのだからこそ完璧に整備しておきたいものです。
万一の事故での安全性を考えて車にオプションのカーテンエアバッグを付ける選択をした人が居るとします。ディーラーから「こちらは10万円で事故の際には100%開きます。こちらは8万円で事故の際に『開くことは開くと』思います。」と言われて8万円のエアバッグを選ぶ人は居ないでしょう。
万一の時のものだからこそ、その万一の時には確実に動作してもらわなければ困るのです。
また、記名被保険者に関する告知が正しく行われていない状態で保険代理店が故意に契約を成立させてしまった場合に、不実告知による契約解除の例外規定が、契約時の自分と保険代理店の目論見どおりに運用されるかどうかも非常に怪しいものです。
万一の保険金請求の際にこの例外規定が適用されるためには私が契約時に保険代理店か外交員さんに対して、少なくとも一度は記名被保険者に関する「事実」を伝えたということを証明できなければいけないわけですが、通常これは困難です。
私は途中から怪しさを感じてから外交員さんとの面会を断り、やり取りをメールに限定しましたが、先方のメールアドレスは保険会社や代理店の法人アドレスではなくWILLCOMの個人アドレスでした。記録の追跡や保存という意味でこれを信用するわけには行きません。
(私がメインの生命・医療保険を契約している某社は顧客との連絡は当然のことながら会社アドレスで行いますし、記録の追跡についても配慮しています。このあたりにも会社の意識の差があります。)
事故があり、契約上の問題が深刻化すれば外交員さんも代理店もそのようないい加減な契約をしたことを素直に認めることはありませんから、言った言わないの話になって終わりです。
というわけで、私は先方に下のメールを送りました。
大人げないと思われるかも知れませんが、この方が私の個人年金や医療保険も扱うと思うと、白黒ハッキリさせないと気が済まないのです。
「○○様からのご回答の内容に関わらず、今回のケースでは、当方から貴社に保険契約上の告知事項として『主として運転するのは夫』『妻は運転しない』旨を伝えているので、貴社がそれを認識した上で記名被保険者を妻にした契約を請けた場合には○○損保様のHPにある『普通保険約款』第○条(△)□にある契約解除権の除外規定を貴社が『積極的に運用』することで、当方は事故に関する損害の補償を受けられるものと拝察する。
こう考えることで、○○様からのご返信にあった『お勧めはしない』『補償『は』される』との表現(ニュアンス)に納得できた。
(当方としては、今回のケースにおいて、この方法以外に記名被保険者を妻にした契約で私が補償を受けられる可能性が見出せない。)
ただし、上の除外規定が確実に適用されるためには、当方が告知事項を事実のとおり伝えたことを貴社が認める必要があるが、これは当方からの保険金請求時に一切保証されるものではない(言った言わないの問題になる)から、当方はこのような契約はしない。
しかしながら、もしも上のような意図で度重なる当方からの問い合わせに対して『補償はされる』と言っていたり、被保険者から告知された内容と異なるように契約を行おうとしていたのなら、そもそも保険代理店として問題のある取り扱いではないか。
今後○○様に説明される内容は、今回の自動車保険のことに限らない。生命保険に関するご説明も受けるわけだから、(もし今後もあなたが担当なら)私の理解が間違いであることをご説明いただきたい。
すなわち、「何故、記名被保険者を会社HPや約款の定めと異なる契約を行っても保険契約が有効になるのか」ということについて、根拠に基づくご説明をいただきたい。
『HPやパンフレットで紹介しているのは安いプラン』との説明があったが、保険料は関係ない。問題は保険契約上の記名被保険者の適格性と、契約解除条件との間の問題である。保険料を上げれば記名被保険者の範囲が広がるのか。それであれば、結局、私自身が被保険者になるのと同じことではないか。
以上、大変勝手な連絡であるが、当方の無理解、思い違い等があったら誠に申し訳ない。ご検討願う。」
さて、先方からどのような返信があるでしょうか。
(つづく)
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