中部電力浜岡原子力発電所5号機(静岡県御前崎市)で運転停止作業中の原子炉に海水が流入した問題について、中部電は20日、タービンを回した蒸気を水に戻す「復水器」内部で、冷却用の海水が通る配管(細管)が複数、破損しているのを確認したと発表した。
別の配管のキャップが外れた状態で底部に落下しており、このキャップが当たって損傷したとみられる。(中略)今年2月までの定期点検時には配管もキャップも異常はみられなかった。(2011年5月20日21時48分 読売新聞)
原子炉に海水が流入と聞いて何が起きたのかと思っていたところ、中部電力からは下のプレスリリースが。
この題名、初めに観測された事象はそのとおりなのでしょうけれど、ニュース記事から検索キーワードを拾ってもなかなか辿りつけない感じです。
さて、報道では配管のキャップが外れて云々とありましたから、私はてっきり腐食や異常な圧力などのためにキャップが外れたのかと思っていました
しかし、報告書の写真を見ると…、
「あれ?仮留めだけで本溶接してない?」
「…まさかね。」
報告書には「主復水器(A)内部に設置している電動給水ポンプの再循環管路にもエンドキャップの脱落している箇所があることを確認しました。」との記載が。
少なくとも正常な運転操作のなかで、きちんと溶接された配管部品が2個所で同じように(当方誤解のため修正)破損するなどということがあるのでしょうか。
このような場所ですから、開先を切って完全溶け込み溶接するのが当たり前です。
報道ではエンドキャップは直径約20cm、重さ3.5kgほどということですから、厚さは14mmくらいでしょうか。
200Aの配管はよほど薄肉に見えますし、きちんと溶接されたこのキャップが飛ぶほどの圧力がかかったら、他の配管も無事ではいられないでしょう。
素人考えでは、キャップがここまで綺麗に剥がれるというのは、配管屋が2箇所で同じように本溶接を忘れたのではと疑ってしまいます。
報告書の下のほうを見ると
「電動駆動給水ポンプは、原子炉の起動・停止時に使用するポンプです。通常運転通は、タービン駆動給水ポンプで原子炉へ給水を送水しており、電動駆動給水ポンプは待機状態となっています。」
と書いてありますから、検査等のために何回か原子炉を停止しているうちに仮溶接が耐えられなくなって脱落した…とか。
ただ、この種の配管設備で完成時にも定期検査でも気密試験をしないはずはありませんから、私が考えるような溶接漏れなんてね、まさかそんなことはないでしょう。
というか、お願いですからないと言ってください。
一方、細管の破損部分。キャップが当たっただけでああいう壊れ方はしないように思います。
最初の一撃はキャップだったのかも知れませんが、今回の停止操作だけであそこまで配管が欠損してしまうものでしょうか。
疑問は尽きません…。
冒頭の報道では「今年2月までの定期点検時には配管もキャップも異常はみられなかった。」とのこと。
「去年の記録書式に基づき異常は見られなかった」とか、どうかそういうことではありませんように。
というか、ああいう部分ってSUSで出来ていると思っていたのですが、どうやらそうではないようですね。勤務先の水配管と同じく、いつ穴が空いても不思議がないような。
ホントに大丈夫なのかなあ。
通常の運転操作で壊れるようでは異常時にきちんと制御されると信じるほうが難しいのですが。
(5月23日追記)
・ 報告書の写真を見なおすと、熱交換器のチューブは銅系の合金のように見えますね。そうであれば、組み立ては半田付け(ろう付け)でしょうか。きっと普通のボイラーのように、漏れた細管はプラグで潰すんでしょうね。まあ普通の構造といえば普通なのですが、普通ではいけない気もします。
・ WEBのトップページから報告書へのリンクがないことや、報告書の題名を、報道で使われる言葉とは異なる用語にしたりしているあたりが人目を避けようとしている意識の表れのように感じます。
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