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2008年10月 4日 (土)

学歴に相応しくない(と本人が思う)配属になった若者へ

会社での配属って、言うまでもなく本人の思う通りにはなりませんよね。

製造業の場合は、何しろモノ作りが基本なわけですから、極めて少数の特殊な人を除いて、高学歴だというだけでモノ作りが分からないままでは開発なんかできないわけです。

もちろん、大企業の場合は基礎研究とモノ作りの間を埋めるたくさんの部署があるので、場合によっては開発部隊が開発だけに専念するケースもありますが、中小企業の場合は、モノ作りと開発作業というのは直結、というより同化しているわけで、その会社でのモノ作りをマスターせずに、驚くような利益を生む製品を急に開発できてしまったりはしないわけです。

 

 

が…、

やはり入社して間もない社員には、これが分かりにくいんでしょうね。

「製造現場と研究は別のものですよね。」

「自分は高学歴で研究を希望して入社したのだから早く研究部に行かせろ。」

(整理整頓等を差して)「それって、雑用ですよね。」(だから自分はやらない。)

 

う~ん。

そういうことを言っているうちは開発には行かせられないな…。

少なくとも中小の製造業がどのように成り立っているのか分かっていませんね。

 

いや、分かりますよ。

その時期は格好良く見えるんですよ、開発とか研究とかって名前の付いた人が。

白衣を着て、あるいはPCの前でCADをいじっている人が素敵に見えるんです。

同窓会をやれば、背広を着て歩くという同級生と、汚い作業服を着て製造作業をしている自分を比較してしまうんです。

彼らがどれほど自分の考えにおいて利益に直結したクリエイティブな仕事をしているのかどうかは別にしても。

で、自分が限りなくみすぼらしく、かわいそうに思えてくるわけです。

私もそうでした。

1秒でも早く格好良い部署(笑)に行きたいと思うんです。

 

ただ、私は精神論は大嫌いですから、

「この仕事は10年やらねえと覚えられねえ」

ってなことは考えません。

覚えたものは1年でも1秒でも覚えてるんです。

しかしながら、製造作業においては、経験しないと分からないことというのは確実に存在します。

将来的にそれが高度な知識を以て整理されるものだったとしても、兎も角現時点においては経験的なやり方でしか処理できないことが存在します。

  

そんなわけで、どう見ても当社における製造作業の前提を覚えてないでしょ、って状態で「早く研究業務に」というようなことを言われても…。

いや、はっきり言って困るんです。

本人に上のようなことを説明してもほとんど受け入れられませんから。(泣)

それにしても、これから40年にも及ぼうかという長いサラリーマン生活の最初の数か月でそんなに焦らなくても。

その時期にしか経験できない現場作業を大いに経験して来れば、会社にとって欠くべからざる人材になり得るのに…。

 

開発に向いた素質があるかどうかは、しかるべき人が見れば現場の作業の中でも分かると思いますよ。

問題を発見する能力、着想する能力、問題を整理し解決する能力といったものは、開発や研究には必須のものですが、本人がそれを持っているかぎり、現場の作業の中でだって、どうしても見えてくるものです。

逆に、本人がそれを秘匿しようとしても、それは難しいでしょう。

コミュニケーション能力について決定的な欠陥を持っていない限り、疑問や学習欲は、日々の仕事の中で必ず見えて来ます。

 

「おれの能力はバカな上司には分からない。」

そう思ったら、まずは兎も角、自分の何たるかを見せてもらいたいものです。

自分は自分の秘めたる能力を知っていても、会社と社員ははじめは他人なんですから、もしも完全に秘匿しするのなら、何も言わずにその能力まで分かってくれというのはさすがに無理でしょう。

 

それとですね、基本的に会社の人事は本人の希望ではなく、会社としてメリットがあるように決めるわけです。

本人の希望どおりにすれば会社にとってメリットがあると思えば結果として本人の希望がかなうこともあるでしょうけれど、それは「たまたま」です。

全ての社員を(その機会において)平等に扱う必要があるわけですから、仮に会社が「そろそろ異動させるか」と思っていたとしても、他人が居るところで面と向かって

「いつ開発に行かせてもらえるのか。」

「現場で3か月やったのだから開発に行かせてくれ。」

なんて言われたら、会社としては逆にやりにくくなるわけです。

会社の心づもりを知らない人から見れば

「当人の要求を受け入れた」

という形になってしまうわけですからね。

「ごね得」

があるかのように誤解を招くわけです。

会社としてのこのへんの都合も理解しておかないと…。

 

会社は、高学歴の社員をきちんとした理由の元に作業現場に長く居させる場合があるわけです。

プライドの高い新入社員にとっては、これがとても屈辱的な取り扱いだと感じるのは理解できますが、会社の立場から見てみると、ずっとその仕事をさせるために、わざわざ高い給料を払って高学歴の社員を採用したりするでしょうか。

損得勘定から言って、そんなことがあるはずがないわけです。

いつかは相応の仕事をさせたいから給料を払っているわけで…

合理的に考えて、このへんも分かってもらえないかなあと思います。(笑)

 

最後に。

もしも「自分だけは早く研究職」と言うのなら、あなただけを特別に扱うべき客観的な理由を自分で示してください…。

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コメント

かなりお怒りですね。
おっしゃるとおりだと思います。

最近は心の問題が多く、会社側も結構苦労しながら、配属や勤怠管理をしている状況ですが、これを逆手にするような困った発言もちらほら見られます。困ったものです。
また、
発展途上で急激に成長している国から来た方は、数ヶ月か5年で一流になれると考えているようで、一足飛びに高度な仕事をしたいと希望する場合が多いようです。日本の若者も同じような感覚になってるんでしょうね。ただ、前者は努力も惜しみませんけどね
確かに自分も若い頃に早く自分自身で設計をやりたいと思ったものですが、そのときがくればチャンスはあるものです。その特かどうか回りは見てますからね。

竜虎さん、単なる愚痴にコメントをいただきありがとうございます。(笑)

私も現場配属のときに工場の裏で機械を蹴っ飛ばしていたことがあるので彼らの気持は良く分かるのですが、今になれば、その時の経験があればこそだと思うことがいくらでもあります。現場でも自分らしくやることはいくらでも作れましたし。

そして、会社はまさにそれを期待していたのでしょう。

ご指摘のとおり、周りはちゃんと人を見ていますよね。管理者ではなく同僚から見ても「その時期か」という問いへの答えはそれほどブレないと思います。全員が太鼓判を押す必要はないと思いますが、半分くらいには押されて欲しいものだと…。

今回のケースの場合、本人は理解がないために、たぶん本当に真っ直ぐな気持ちで言っているんです。

なんとも取扱いに苦慮します。(泣)

突然書き込みですみません。同じ思いを過去に何度もしたので、ずうずうしく書き込みさせていただきます。
私はすでにスピンアウトしてしまった身ですので、あまり説得力はありませんが、このテーマは院卒の新人に多いですね。会社にいた時のこの手の問題に関しては、「研究したいんならなんで大学に残らなかったの?」という問いかけからコミュニケーションを深めました。
新人が来て嬉しいのは、何でも吸収してやろうという(最近ではほとんどまれな)意気込みの若者が来たときですね。

サイトーさん、こんばんは。私の愚痴にコメントを頂戴しありがとうございます。
元気な若者が来たとときは嬉しいですよね。何でも教えようと思います。自分で答えられないことなら、社内の適任を紹介することにしています。
「なんで大学に…」というのは本当に根本的な問いかけですね。同じく「なんのために会社に来たの?」と問いかけたくなる若者もいます。
派遣社員を長く経験した方は正社員の価値というものを強く感じるようで、派遣後に社員採用した場合は総じて意識の問題が少ないように感じます。
ただ、本来は人間ができていない私のほうに原因を求めるべきなんでしょうね。
うーむ。

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