自習~リサーキュレーティングボール式ステアリング機構
(140点の図解でわかるクルマのサスペンション 山海堂より)
ここのところ、車についての昔からの疑問を解消しようと、初心者向けの本を読むなどして勉強しています。勉強した内容は、せっかくなので、ノート代わりにBlog記事にしておくことにします。(恥さらしとも言う・笑)
今回のテーマはリサーキュレーティングボール式ステアリングギアボックスの構造です。
この部分についての私の疑問は、
① リサーキュレーティングボール式のサーボアシストはどういう構造なのか?
② サーボアシストが効かなくなるとなぜ操舵に剛性感が無くなるのか?
③ リサーキュレーティングボール式ギアボックスのバックラッシュ調整はどのように行うのか?
ということでした。
① については、『』にあった上の図を見て納得しました。
ステアリングシャフトに取り付けられたコントロールバルブで制御された油圧が、ボールナット(パワーピストン)部分を左右に動かすんですね。実は今まで、どこに油圧がかかってどこをアシストするのかすら知りませんでした。よもや油圧モーターの逆の動きでステアリングシャフトを回転させるのではないかと思っていたりして。(笑)
ただこの図では、パワーピストンを右に動かすときはピストンの左側のチャンバーを加圧すれば良いと思いますが、パワーピストンを左に動かすときにはギアボックスの右半分、セクターギアが入っている部分も含めて加圧しなければならないように見えます。
ギアボックスにはハウジングの合わせ目もありますし、シャフトも出ています。いかにも油が漏れそうな感じですが・・・私の理解で良いのでしょうか。
②の疑問というのはこういうことです。
パワーステアリングの付いた車で、パワステポンプのベルトが切れるなどしてサーボアシストが効かなくなったとき、ハンドルの操作は、当然のことながらものすごく重くなります。
しかし、それを無理に回そうとして思いっきり力を入れると、どうもステアリングシャフトが捩れているように感じるのです。元からのノンパワー車にはない感触で、もしもサーボアシストが効いているときのようにステアリングを回そうとすれば、その力に耐えられず、ステアリングシャフトがねじ切れてしまいそうな頼りなさです。
舵取り装置ともあろうものがそんなことで良いのか?パワーステアリング車はノンパワーで乗ってはいけないのか?(笑)と疑問に思ったのですが・・・そんな疑問もこの図で解消することができました。
ウォームとステアリングシャフトの間には『トーションバー』などというものがあったのですね。なるほど、捩れて壊れそうに感じるわけです。(ラックアンドピニオンではピニオンとステアリングシャフトの間)
サーボアシストは、ウォームの先のセクターギアの左右の運動に対して効くのでステアリングシャフトには強度は必要なく、また、トーションバーによる適度な捩れがないと、コントロールバルブの開度が確保できないということなのでしょう。
サーボアシスト付きつきのステアリングシャフトは、パワーアシストのコントロールバルブ(スプール,フラッパー)を開閉し、若干の反力をステアリングホイールにフィードバックするようにしか作られていないようです。
逆に言うと、パワーアシスト付きの車でそれが壊れたら、無理してそのまま走らせてはいけないと言うことになりそうです。最悪はトーションバーをねじ切って全くハンドル操作が利かない状態になってしまうかも知れません・・・。(恐)
③についてはこういうことです。
リサーキュレーティングボール式ギアボックスにあるバックラッシュ調整ネジは、全てセクターシャフト、あるいはステアリングシャフトの軸上に付いています。これではエンドプレイ(軸端の遊び)は調整できても、一番重要なセクターギアのバックラッシュは調整できないように思えます。セクターギアのバックラッシュを調整するためには、直交する2本の軸を、近づけたり離したりしなければならないはずですから。
しかし現実には、軸上にあるネジでバックラッシュが調整できてしまうわけで・・・何故?と思ったのです。
(US ARMY LIGHT WHEEL VEHICLE MECHANIC
MOS 63B SKILL LEVEL 3 COURSE テキストより)
これについては、上の図でスッキリ疑問解消しました。(なぜかアメリカ陸軍の教育用テキストです。)
なるほど、セクターギアが斜めに(傘歯状に)歯切りされていたんですね。これならセクターシャフトを軸方向、図で言えば上下に動かしてバックラッシュを調整することが出来そうです。
以上、リサーキュレーティングボール式ステアリング機構の自習レポートでした。
『バカ!ぜんぜん間違ってるよ!』
というところはぜひご指摘ください。
改めて勉強しますので。(笑)
【参考】 SERVICING RECIRCULATING BALL STEERING GEARS,
Larry Carley, Brake & Front End, January 2002
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
相変わらず勉強好きですね(笑)、基本的な構造はよく理解されていると思います。 ZFのリサーキュレートボールベアリングシステムは引用されている画像とは若干構造が異なります、具体的にはパワーシリンダ部がトーションバーより一番遠い位置では無くセレクタシャフトよりも内側になりセレクタシャフトは低圧室側になる構造です(まーあまり大した差ではありませんが、オーバーホール時にはそれを知らないと若干問題なので)
バックラッシュ調整の構造はほぼご理解されている通りです、このリフト量というのは結構ありましてSNSで解説しているように極端にこの調整量を大きくすると当然ながらフロントのアライメントまで変わってしまう程です。 オーバーホール時には当りの調整はプライヤー程度のものでシャフトを掴み軽く左右に回転振りをしながらすると簡単に判ります。
750用のステアリングギアボックスは3種類程ありアイドラアームのシャフト径が違うのとセレクタシャフトのストッパー有無等が異なります。 中古予備部品等を入手する際にはそのあたりを注意さえすれば大丈夫です。
投稿: たけ | 2008年3月28日 (金) 01時40分
ottoさん、お久しぶりです。
前職での担当分野の話が出てきてなんだか嬉しいです。まだその職場にいればトラック用のPSギヤボックスのカットサンプルを持ってこれたのですが(ただし重量は30kg位ありますが…)。
さすがottoさん、理解の通りで間違いないと思います。トーションバーのねじり剛性と油圧特性で操舵時の手応えを、バックラッシュで微舵の応答や手応えのヒス感などをチューニングしたりしました。
この件については今度お会いして、参考書でも見ながらゆっくり話しましょう!
投稿: BS運転手 | 2008年3月28日 (金) 12時43分
たけさん、コメントありがとうございます。
そうですか、750でもだいたい一緒なんですね。加圧方向についてはバックアップリングやシールの向きを間違えてはいけませんからやはり要確認事項ですね。その他、互換性情報もありがとうございます。OHにしても中古・新品手配にしても、いい加減に手配すると痛い目に遭うと言うことで了解しました。(笑)
私の車両は走行5~6万キロの時にディーラーでギアボックスを新品交換されてしまいました。油漏れの修理でAssy.交換です。もちろんOH出来ないのか?とは訊いたのですが、部品が出ないから不可との返答。
まあ、輸入車ディーラーというのはどういうものなのか体験してみたいという気持ちもあって、その時はそのまま頼んでしまいましたが、今思うと実に勿体無かったなあと思います。せっかくのバラしチャンスだったのに!
今度トラブったときには必ずバラすことにいたします。そのときはまたよろしくお願い致します。
投稿: otto | 2008年3月30日 (日) 09時09分
BS運転手さん、こちらこそご無沙汰しております。
操安性試験ご担当とは聞いていましたが、そう言えば大型車はボールナットですもんね。まさに”そこ”がご担当だったとは知りませんでした。
カットサンプルは惜しかったですねえ。ぜひ見てみたかったと思います。大型車用ならそれぞれの部品が大きくて分かりやすそうです。(?)
先日、勤め先に来るタンクローリーの足回りを下から覗いていたら運転手さんに怪訝な顔をされました…。
講座、楽しみにしています。4月半ばには休日が休日になる(笑)ので、ぜひお会いしましょう。羊を焼く計画もあるんです。
投稿: otto | 2008年3月30日 (日) 09時29分