モーターファン誌ロードテストから~ブレーキサーボの勉強
(モーターファン誌 1984年2月号 セドリックロードテストより)
古いモーターファン誌でブレーキサーボの勉強をしました。
例題は、Y30セドリックでのブレーキペダル踏力と減速度との関係を表したグラフです。
縦軸が踏力(N,kgf)、横軸が減速度(m/sec2,G)で、上の線がブレーキサーボ無しのとき、下の『>の字』になっている線がブレーキサーボ有りのときのグラフです。
たとえば、0.2Gの減速を行おうとするとき、ブレーキサーボが効いているときにはブレーキペダルを5kgfで踏めば良く、ブレーキサーボが効いていないときには同じ減速度を得るのに30kgf弱の力が必要になることが分かります。
さて、グラフを見ると、ブレーキサーボ有りの場合、0.7Gくらいのところで急にグラフが立ち上がっています。
つまり、0.7G以上の領域では、それまでよりもより強くペダルを踏み込まないと、同じような減速度の増加を得られないということです。
つまりどういうことか・・・。
ここから先は私が勝手に想像していることなので参考程度にお読みいただいたいのですが、要するに、0.7Gの減速度を得るだけのサーボを行ったところで、ブレーキサーボの能力が一杯になってしまったのでしょう。
そこからあとは、サーボは常にフル出力で力が一定なので、追加分は人間の踏力でがんばる必要があるということです。0.7G以上の領域でのサーボ有りのときのグラフの傾きが、サーボ無しのときのグラフの傾きと同じになっていることがそれを示しています。
サーボだからと言って、どんな大きな入力に対しても単純に何倍の出力を出せる、というわけではなということですね。単純な油圧回路なら、増圧割合は配管が壊れるまで同一ですが。
この車の最大限速度である0.8Gを得るのに必要な踏力は約40kgf。0.7Gに必要なのは約20kgfですから、減速度をたった0.1G増すために踏力を2倍にもしなければならないということです。
『ここ一発効いて欲しいときに最後が弱い』
と感じてしまいそうな特性です。ABS無しの時代にパニックブレーキでもロックしにくくするという意味があったのでしょうか。
同時期のテスト記事を見ると、クラウン2800その他、サーボが足りなくなってグラフが途中で急に立ち上がる形になっているものが少なくありませんでした。
(モーターファン誌 1984年4月号 クラウンロードテストより)
このような特性は特に当時の大型車に多く、小型車ではほとんどがブレーキサーボが比例出力を出せる範囲で最大減速度を得られていたようです。
このクラウンの試験結果で面白いのは、車速が50km/hでは0.6G以降、サーボが限界に達してノンサーボ状態になっているのに対して、車速100km/hでは最後までサーボが比例領域にあることです。
おそらくこれは100km/hからの減速ではエンジン回転数が十分に上がっていたため制動時のエンジン負圧が大きく、結果としてブレーキサーボの出せる力が増したということなのでしょう。
もちろん、サーボ力が十分な車では、大型車でもブレーキペダル踏力と減速度との関係を表したグラフがこのような形になってしまうことはないようです。例えば下のグラフ。
(モーターファン誌 1983年10月号 BMW533i ロードテストより)
これはBMW533i(E28)の試験結果です。この車は、私の750と同じように、油圧サーボを備えています。0.8Gまでの制動でも、踏力と減速度がキッチリ比例しているのと同時に、その踏力自体も非常に小さかったようです。
減速度0.8Gで比べたとき、セドリックが約40kgfもの踏力を必要としたのに対して、533iが必要とする踏力はたった10kgfちょっとです。これではどんなに鈍い人でも、『効くブレーキだ』と感じるでしょう。
テスト記事に付されている対談コーナーでも、『このブレーキは良いねえ。』というような話になっていました。当時のレベルからしたら驚異的な効きだったのでしょう。
(油圧サーボのヒステリシスや、その他フェード性能などについてはまた記事にしたいと思います。)
ところで、少々の仮定を入れることで、これらのグラフから
① このときにサーボがどのくらいの力を出しているか。
② この車のマスターバックの直径はどのくらいなのか。
が計算できそうです。
セドリックでのグラフを例にとって、まず①です。
これは、サーボ力が一杯になったと思われるポイント(0.7G)での、サーボ無しのときの踏力と、サーボ有りのとき踏力の差を求めれば良いはずです。
サーボ無しのときの線が途中で切れてしまっていますが、このあとも同じ傾きになっているはずですから、本をコピーしてそのまま定規で線を伸ばすと(笑)、サーボ無しで0.7Gの減速度を出すには、ペダル踏力が96kgfほど必要になることが分かります。
サーボ有りの時には同じ減速度を出すのに必要な踏力が約20kgfですから、その差である76kgfの踏力に相当する力を、サーボが助けていることになります。
ブレーキペダルとマスターシリンダーの間のレバー比を大雑把に5と仮定すれば、実際にサーボが出している力は76kgfの5倍で約380kgfと計算できます。
次に②です。
サーボの圧力源はエンジンの負圧です。
制動テストを行ったときのギア位置が分かりませんが、おそらくニュートラルにしたわけではなく、Dレンジで走って来てそのまま制動でしょう。つまり、エンジンブレーキがかかった状態なので、負圧は500~550mmHg(約0.7kg/cm2)と仮定します。
サーボが出した力は①で約380kgfらしいということになっていますから、それだけの力を出すために必要な受圧面積は、380kgf ÷ 0.7kg/cm2 = 542cm2 となります。
面積 542cm2の円の直径を求めると26.3cmとなりますが、これをインチに直すと10.3inchにもなってしまいます。そんな大きなマスターバックがあるとは思えないので、おそらくタンデムなのでしょう。
タンデムであるとすると、直径は7.4inchと計算できます。7.5inchくらいのタンデムか、7-8inchのタンデムあたりと考えれば矛盾はありませんが・・・。
はい、車が古すぎて、正解を見つけることが出来ませんでした。
毎度のことですが、一応、現実味のある数字が出てきたところで満足します。(笑)
正解をご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひご教示ください。
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