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2008年3月18日 (火)

ブレーキサーボ~各方式

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ブレーキサーボ(ブースター)にはいくつかの方式がありますよね。多く見られるのは真空(バキューム)式、空圧式、液圧式でしょう。

バキューム式は多くの乗用車に使われ、空圧・空圧油圧(エアハイドロ)式は大型のトラック、液圧式は一部の大型車乗用車やRV車に使われているようです。

乗用車の液圧式のサーボというのは珍しいものなのかと思っていたら、日本車でも100系のランクル、最近のパジェロ、Y32,Y33シーマあたりに使われていました。昔の雑誌を眺めると比較的古いBMW各車、Audi100にも採用されていたようです。実はそれほど珍しくもありませんでした。

 

ところで、一般にサーボの機能というのは、小さな入力で大きな力を制御することです。当然、入力には増減があり、これをできるだけリニアに、かつ、操作する人間に都合の良い倍力比で出力に結びつけるものが、『良いサーボ』です。

結論から言って、応答性良く正確で大きなサーボ出力を得ようとしたら、空圧式よりも液圧(油圧)式のほうが優れているということになるでしょう。空圧式では動作流体として使われる空気が圧縮性流体であるのに対して、液圧式は非圧縮性だからです。動作流体の体積変化を待たずにきちんと圧力を受け、伝え、そして保持するには、動作流体が非圧縮性であることは大きなメリットです。

油圧の方が高圧コンパクトな設計でサーボ比を大きくとれるというのは結果的な話で、そもそも油が非圧縮性流体であるからこそ、高圧の動作流体として使えるわけです。(空圧でも、やろうと思えば数十キロの圧力を得ること自体は難しい事ではありません。)

 

正確な意味では制御で言う『サーボ』と離れてしまいますが、よく見かける例ということで、バックホー(パワーシャベル)やクレーンのブームを動かしているシリンダーについて考えてみると、それらは私の知る限り、必ず油圧で動いています。伸縮両方向ともに、手元操作弁のわずかな動きに即応して各部を動かすためには、必ず動作流体に非圧縮性の流体を使う必要があるからです。

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仮にそれらを空圧で動かそうとしたら・・・

スティックスリップによる振動、不確実な位置保持、破裂の危険、応答性の悪さ、等々、おそらく、とても実用にはなりません。という以上に、荷重変化による変位が大きくてとても危険でしょう。

自動車でも、入力と出力の比例性が厳しく求められる『パワーステアリング』に空圧式はありません。(ステアリングの場合、サーボの限界でロックするという液圧式特有の問題が起こりますが。)

そんなわけで、ブレーキサーボについても、本来のサーボ性能だけを考えれば、おそらく油圧式のほうがその特性は良いのではないでしょうか。

ブレーキに油圧サーボを使うE32の750では、油圧制御弁(スプール弁?)のフリクションのせいか踏み始めの動作こそ渋めですが、そのあとは剛性感のある効き方をします。

言葉ではうまく説明できないのですが、制動力が瞬時に立ち上がって・・・いや、立ち上がりの過渡特性など感じないで・・・『ドスン』と効く感じです。これが油圧サーボ特有の感触なのでしょう。(油圧サーボを使った他の車に乗ったことがないので詳しくは分かりませんが。)

Booster
(特許庁ホームページ「標準技術集 自動車・二輪車の ブレーキ・サスペンション部品」より引用)

上の図にあるようなバキューム式の場合、一番サーボ力が欲しい全制動の時に、

①ペダルを踏む → ②ポペット弁が開く → ③大気室に大気が入り始める → ④パワーピストンが動きながら大気室の圧力が徐々に上がる → ⑤大気室の圧力が大気圧に近くなると空気の流入速度が落ちる → ⑥サーボ力が最大に達する

という経過をたどるわけで、空気室に出入りする空気の量も多く、それほどレスポンスを上げられる構造ではありません。

ブレーキをガツンと踏み込んだとき、最初の踏み込みではブレーキペダルが重く、遅れてペダルがグッと入って行くのは、おそらく踏み込み速度に対して大気室に大気が入る速度が不足してしまうからでしょう。ブースターが踏み込みの抵抗になっているとも言えると思います。

(バキュームブースターの動作について詳しくは特許庁ホームページの「特許・実用新案検索」で、例えば「特許公開2007-99277」を見ると、実施形態の中にクドクドと書いてありました。)

逆にペダルを放したときも、

①大気室がバキューム側に連接する → ②エンジンバキュームの能力とリターンスプリングによって徐々に大気室の大気が抜けて行く → ③もとの位置に戻る

ということになります。実際、ペダルを短い間隔で強く繰り返し踏むと、ペダルが戻りきれずに奥に入ったままになってしまいます。

(バキューム式については、動作圧力源となるバキューム圧力自体が安定していないということも、いまいちな点だと思います。ブレーキに軽く足を乗せたままシフトチェンジしてエンジンブレーキをかけるとペダルがスコッと奥に入ってブレーキが強く効いてしまうあの現象です。)

一方、油圧サーボの場合は、動作流体の圧力が高い(750の場合52~57barらしい)ためにサーボピストンが小さく、かつ、サーボ動作のために出入りする流体の体積もバキューム式とは比較にならないほど少ないので、基本的にはバキューム式と同じ動作経過を辿るものの、その動作は非常に速いものとなります。

ただ、高圧のシールを確実にするため、シールによる各部のフリクションはどうしても大きくなりますから、フェザータッチで効くブレーキを作りたい場合、油圧サーボは向かないでしょう。

そして、油圧サーボの大きな欠点は、油漏れの問題です。空気ならどこに漏れても構いませんが、油はそうも言っていられません。高圧の部分の油漏れは、どうしても付いて回る問題になっているようです。

下にリンクを貼らせていただいたサイトには、E32の7シリーズに使われているH31と呼ばれる油圧サーボの内部の様子、そしてバキューム式への改造の様子が紹介されていました。

【参考資料】 H31システムの構造

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設計者に訊かなければ分かりませんが、この車の場合、スペースの都合でバキュームブースターを収める場所がなかったということも、油圧サーボを使った理由のひとつではないかと思います。

レスポンス良く、剛性感のあるサーボ制御を行おうとしたら、どう考えても油圧式のほうが有利であるように思えます。スペース的にもコンパクトで良いと思うのですが・・・。

なぜ油圧サーボがもっと増えないのか不思議です。

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コメント

わたしも油圧サーボファンです。
といっても、シトロエンのハイドロしか知りませんが。
あの瞬時にカッチリ効く感じを、なぜどのメーカーも求めようとしないのかがまったく不思議でなりませぬ。think
確かに油は漏れますが。。。

投稿: shalo | 2008年3月19日 (水) 23時59分

昔、アクティブサスを積んだY32シーマに試乗したことがありましたが、ブレーキが油圧サーボでした。今思えば、ブレーキを踏んだときにペダルの踏み込みのストロークが浅く剛性感のあるカチッとしたタッチでした。対してUCF21セルシオは、ペダルを踏めば踏むほどフニャ~っと奥まで踏み込める感じです。
もちろん、UCF21セルシオの最大減速Gは1.1Gで、当時のポルシェ並みの性能を持っていたので、制動力は優秀です。
しかし、フィーリングは、私も油圧式のあのカチッとした感じが好きです。
ちなみに現行モデルで油圧式を採用した車種を私は知りません。

投稿: haruki | 2013年4月 3日 (水) 23時31分

harukiさんコメント有難うございます。
Y32も油圧でしたか。当時流行ったのかも知れませんね。
私のE32のブレーキは非常に変わったフィーリングでした。静止状態でぎゅーっと踏むと床まで踏めてしまうのですが、走っている状態でガツンと踏むと固いフィーリングのままABSが効きだすのです。他のBlogでもそう書いている方がいらっしゃったので故障ではないと思います。
UCF21の減速GはCG誌のテストで覚えています。さすがだなあと思いました。ただ、おっしゃるとおりフィーリングはエアを大量に入れたような感じでほんわしていたと記憶しています。
今のブレーキはエアサーボが主流ですが、今後は電気サーボになって行くのかも知れませんね。ブレーキバイワイヤでMBが失敗しましたが。

投稿: otto | 2013年4月16日 (火) 16時18分

実は私もUCF21購入後、95年のCG誌を購入し、その記事で、ブレーキ性能を知ることになりました。
別ページの記事で取り上げられていた、初代オデッセイが0.8Gとのことですが、現代の車でも1.1Gという数値はかなり優秀な数値なのではないかと思っています。
電気式ですか...どうなんでしょうね。電磁弁の様なもので、フルードに圧力を加えるんでしょうか。

投稿: haruki | 2013年4月25日 (木) 23時16分

かわばたです

Y32のハイドロマスターはとっても好きなのでうちの車にはみんな付いています。

E32のハイドロはATFですがY32はブレーキフルードだけで制御しています。

どちらも32だというのは偶然ですかね?

日産のハイドロマスターは結局Y32のみで終わってしまいました。
コストと重量の兼ね合いかと思います。

油圧ポンプは電動式で100kg/cm2以上の圧力を掛けています。E32のものと違って液漏れが発生していることはありませんし、故障していることもありません。

解体屋さんによると、トヨタのものは良く出るけれども、日産のものは壊れることが無いので殆ど出ることは無いそうです。
え32は殆どATF駄々漏れになっていますね。
W124に付けた場合http://soptc.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-a388.html

PIAZZAに付けたときはこちら。
http://soptc.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-8ef4.html

取り付けに苦労しますがその甲斐はあると思います。

投稿: かわばた | 2013年5月 8日 (水) 21時25分

かわばたさん、ご返事遅くなり申し訳ございません。
HP拝見しました。いや、これは大工事ですね、私ごときのレベルではありません。
剛性感が何より重要なブレーキという機構にはハイドロブースターが向いてると思うのですが何故最近はその採用が無いのでしょうか・・・。

投稿: otto | 2013年7月20日 (土) 02時16分

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