自習~バキュームブレーキサーボの構造
自習シリーズ(?)、今回はバキューム式のブレーキサーボです。毎日お世話になっているのに、今までその仕組みがどうなっているのかよく考えたことがありませんでした。
しかし本を見ると・・・これがなんとも分かりにくかったのです。
本によってはペダルが踏み込まれた状態とそうでない状態を別のページ(それも裏表)に載せていたり、バルブ部分だけの拡大図にしてあったりします。
そのため、何がどう動くのかを理解するには、図と図を見比べながら”間違い探し状態で”動きのある部分を探さなければならないわけです。
水平方向に動くものなのですから、上下に並べて書けば動作を見比べやすいのに・・・と思います。また、本にある図の解像度が低い上にカラーではないのも痛いところです。
しかし、分かってしまえば構造は至極単純。大まかに下のような動きとなるようです。(図と文字は当方で編集・書き込み)
(出典 「図解でわかるクルマのサスペンション」(SANKAIDO MOTOR BOOKS) ※色と文字は編集あり)
(1)ペダルを踏んでいないときにはバルブリターンスプリングの働きで、①バキュームバルブ=開、②エアバルブ=閉になっている。パワーピストンの両側の圧力は等しいのでサーボ動作は行われない。
(2)ペダルを踏むと、オペレーティングロッドが左に動き、①バキュームバルブ=閉となると同時に、②パワーピストンの両側にある部屋が分離される。(バルブプランジャーとパワーピストンの間にガタがあるところがミソ?)
(3)さらにペダルを踏み込むと、エアバルブが開いてオペレーティングロッドの方からパワーピストン右側に大気が導入され、パワーピストンが左に動く。(マスターシリンダーのピストンを押し込む)
(4)バルブプランジャー(オペレーティングロッド)の動きにパワーピストンが追いつくと、エアバルブが閉となり、パワーピストンはそれ以上動かない。
(5)ペダルを戻すと、①バキュームバルブ=開となり、②パワーピストン右側の圧力が低下、パワーピストンリターンスプリングの力でパワーピストンが右に動く。
こんな動きですから、基本的にバキュームサーボ自体は、『入力した力を何倍にして出力する』というものではなくて、ペダル位置を追いかける位置サーボ的なものかなあという気がします。サーボ力の限界は、パワーピストン面積×負圧です。
また、バルブプランジャー、パワーピストンの間に入ってプッシュロッドに力を伝える(あるいは力をフィードバックする)リアクションディスクの硬さは、ブレーキのフィーリングに大きな影響を与えそうです。
単にサーボとして動かすだけであればこのようなディスクは必要ないのですが、それではブレーキがまるで電気のボリュームのようになってしまい、制動力と踏力を比例させることができないはずです。
パワーステアリングで言うトーションバーと同じように、ブレーキの場合にはこのリアクションディスクの硬さとサーボ力、そしてブレーキシステム全体の硬さのバランスが、そのフィーリングを決めるのでしょう。
リアクションディスクの材質について詳しく書かれたものを見たことはありませんが、おそらくゴムのような弾性を持つ材料で作られているのではないでしょうか。リアクションディスクに接するポペットバルブ先端の形状にも、いろいろ工夫がありそうです。
後で記事にしようと思っているブレーキアシスト機構のうち機械式のものでは、リアクションディスク周り(あるいはそれに該当する他の機構)の構造を工夫することによって、ペダルの踏み込みが強くなったときに、バルブプランジャーのストロークが急に大きくなる(エアバルブが大きく開く)ようにすることで、大きなサーボ力を発生させるものがあるようです。(ただし、サーボ力の限界が上がるわけではない。)
書きたいことは色々ありますが、自習にまとまりが付かないので今回はこのへんで・・・。(笑)
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コメント
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大変勉強になります。ありがとうございます!
(まだ理解できていませんが)
文章と図解がわかりやすく解説されているように思えます。
あまり、機械に強いほうではないのと、
数理系は特に、勉強はできる方ではなかったので、読み返してなんとなくわかった気分に
なれるよう、がんばります。
まずは、何よりも 読んでみよう!と思わせていただける文章と図解を公表していただいてることに感謝です。
投稿: HIDEZO | 2012年12月30日 (日) 16時10分
HIDEZOさんコメント有難うございます。
書いていることは、一応、自分では正しいと思っていますが、誰にも確認していませんので間違っていたらご容赦ください。(笑)
本当は実物をバラしてみるのが簡単ですよね。
いい加減なブログですがこれからもよろしくお願いいたします。
投稿: otto | 2013年1月 5日 (土) 15時45分
この乗用車向けのバキュームサーボって、前々から疑問なんですが、構造上、ペダルの踏力やペダルの角度に比例して、サーボ力を増減させられる構造ではなくて、踏み始めてバルブが開いたその時点で既に最大のサーボ力が働いていて、サーボ力は一定。あとは徐行運転時の微制動から高速走行中に起きたパニックブレーキ時の急制動まで、人力だけで操作してるんじゃないか?と思うのです。でも、それじゃ重量の軽い軽自動車ならそれでもいいのでしょうが(そもそもドラム時代はノンサーボだったですし)、2トン前後にもなる大型セダンでそれをやろうとすると、徐行時に軽くペダルを踏んだだけで、ガツンと止まってしまったり、逆にサーボ力を弱めると、徐行時は良いが、高速走行中に力いっぱい踏み込んでも減速しなくなる?という現象を想像してしまいます。
これは、やはり何らかのサーボ力を可変できるような構造になってるんでしょう、と思うわけですが、このあたりの疑問はどの資料を見てもいまだ解決していないのです。例えばバルブの開く大きさが変化して、大気圧室と負圧室の圧力差が変化するのか?とか、踏力に比例してダイヤフラムの面積を仮想的に変えるとか、寝ながら考えてると眠れなくなりますね(笑)
でも、トラックやバスのような真の意味での(ペダルとブレーキが機械的につながっていなくてペダルの動きは信号でしかない)”パワーブレーキ”ではないことは確かのようですね。
投稿: haruki | 2013年3月20日 (水) 23時17分
harukiさんコメント有難うございます。
この点、私も疑問に思ったところです。確かに、ペアダルからパッドまでの剛性が無限大だとすると、ご指摘のとおり、微かにでも踏み込むと最大のアシスト力が発生してしまうと思います。
ただ、実際にはリアクションディスクとその他ブレーキ系の剛性が無限大ではない(弾性がある)ために、「(バネ系のように)ストロークが力に変換される」仕組みになっていると理解しております。なので、「圧力差が変化して力を制御される」のではなくて、「圧力差は一定だがストロークで力が制御される」のかなと。(ストロークはリアクションディスクの剛性でで決まる)
如何でしょうか?
投稿: otto | 2013年3月24日 (日) 00時38分