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2007年7月17日 (火)

ジニ係数は”格差”を表現するのか?

最近、「格差の拡大」という言葉をよく耳にします。

しかし私はこの言葉が使われ出した当初から、この言葉はどうも定量的な裏付けなく使われているような気がして違和感を感じていました。

例えば失業率であれば「完全失業率が5%から3%に下がった」というように、いつでも定量的な比較とともに報道されていると思います。

いかし同じ報道でも、何故かこの格差の話については「拡大している」「増えている」繰り返すだけで、どのような調べ方をすると、どこで何がどの程度変化していると言えるのかということが全く分からないのです。

そんなある日、通勤の車の中で聞いていたラジオ番組のテーマはまたもや「格差問題」でした。

「格差は本当に拡大しているのですか?」

というアナウンサーの問いに対してゲストの専門家が、

「一般に言われる経済的な格差の評価にはジニ係数というものが用いられます。近年の傾向を見ると、このジニ係数が大きくなっているのは事実です。」

という説明をしていました。

ただ、私が興味を持ったのはその続きです。

「ただし、このジニ係数というものの取り扱いには注意しなければいけません。ジニ係数というのは所得分布の様子を示す係数ですから、所得が全く無い人はこの係数の計算とは関係ないのです。」

会社に到着してしまったのでその後は聞いていないのですが、家に帰ってから、そのジニ係数の計算方法について調べると・・・、なんとなく分かったような気がしました。

私の理解が正しければ、新たな雇用が行われて失業率が下がったり、女性の就職率が上がったりすると、このジニ係数というものは、

「格差が拡大した」

ことを示すように上昇しそうです。

何故か?

ここに書かれているとおり、この指数は統計の母集団の総収入には関係なく、単に分布の偏りを評価しているだけだからです。

母集団の総収入が定常的に安定した状態での「格差」を評価する場合には正しく格差を評価できる指数だとは思いますが、非定常な状態では、その変化自体にジニ係数が振られる仕組みになっています。

例えば、

  • 新たな雇用が創出されて今まで収入を得ることが出来なかった人が収入を得られるようになった
  • 若年層の就業率が上がった
  • 女性の就業率がどんどん高くなっていった
  • 定年が延長された

というようなことが起こると、それぞれの人は今まで得られなかった収入が得られるようになる等、金銭的には明らかに好い方向に状況に向かっているにも関わらず、ジニ指数は「格差の拡大」を示すように思います。

勤続年数が短いことから若年層、及び女性の収入は平均よりも低く、一方、定年延長層の収入は相対的に高いからです。

世帯収入で見るならば、格差問題とは直接関係ない現象である、若年層単身者の増加という生活の有様の変化も、この数字には影響を与えます。さらに、これから高収入の団塊世代が退職金を得るようになると、値はまた動くのではないでしょうか。

つまり、景気が回復せず、若年層に対する新たな雇用が創出されず、女性は就職せず、親と同居し、かつ、定年も延長されずにいれば、おそらく、ジニ係数で見た場合の”格差”は小さくなるのではないでしょうか。

一部の人々は、いわゆる「改革」の時期とジニ係数の増加の時期が一致したことを以って不平等の増加の原因は「改革」にあると印象付けようとしているようですが、本当の原因は実は・・・?

もしもそれを知りながらこの係数の増減の解釈を捻じ曲げて利用しているなら・・・かなり悪質です。故意の誤謬とでも言うのでしょうか?

今まで収入を少しも得ることができなかった人が、多少はあるにせよ一定の収入を得ることができるようになったということを、無視するべきできないと思います。

と思ったら、上のような趣旨で書かれた記事がけっこう見つかりました。

それらの記事では、きちんと定量的にジニ係数の変化と、その他の社会変化の要因を定量的に結び付けて書いていますから、それなりに信頼できそうです。

逆に、”改革が原因だ”的な記事は更に多くありますが、昼休みに読んだ限りでは(泣)、それらの記事で、改革とジニ係数の増加を定量的、あるいは定性的にきちんと結びつけたものは見当たりませんでした。(記事へのリンクは敢えて貼りません)

単に「時期が一致するから改革が原因だ」というだけです。

私はこの数年間で筋力がだいぶ増し、それから少し減りましたが、この現象はちょうど失業率の動きと同じです。

従って筋力の増減は失業率の動きの所為。

筋力を増やすためには失業率を増すと良い・・・わけないですよね。

リンゴは赤いけれど、赤い果物はリンゴとは限りません。

もうひとつ、私の好きな話です。

「ある大企業の社員の年収と血圧の関係を調べたところ、血圧が高い人ほど年収が高いという明らかな相関が確認された。」

「それを聞いた社員は皆、年収を増やそうとして血圧を上げる努力をした。」

「結果、塩分の高い食事をとり、皆が不健康になった。」

これ、両者の中間に存在する”年齢”という要素を忘れてしまったために発生したミスですね。

「年齢と血圧」、「年齢と年収」の間には、それぞれ理由があって相関が発生するわけですが、間にある”年齢”という要素を忘れた挙句に推論を逆に適用したというひどい例です。

統計的な話というのは常にその相関関係をきちんと検証して考えなければいけませんし、ましてやそれを故意に捻じ曲げて自説の根拠にするようでは・・・と思いました。

まあ、素人がラジオで聞きかじったことからの拡大ですから、私の理解が前半の部分で既に間違っていたら御免なさい。

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