« まじめにやって・・・ | トップページ | ポーン »

2007年3月18日 (日)

衝突安全性試験のこと(試験速度条件)

最近では衝突安全性試験の結果が公表されることが多くなりましたよね。各社とも、車種に拠らず「当社の車は安全性が高い」と主張しています。

評価の結果は「☆」の数で表されていて、最近はほとんどが「☆☆☆☆」か「☆☆☆☆☆」でしょうか。

星の数で言うと、星5つの車は、星4つの車よりも安全性が高いと読めるわけですが・・・?

ちょっと考えてみました。

現状、公的機関で行われる衝突安全性試験として代表的な「自動車アセスメント」では、時速55km/hからの衝突で乗員にかかる加速度の大きさを主な基準としてで評価が行われています。

車両を所定速度まで加速した上でコンクリートバリア、或いはアルミハニカムコアへ衝突させた時のダミーにかかる加速度を測り、その加速度が小さければ小さいほど、乗員への衝撃が小さい=負傷の可能性が小さい、したがってその車両の安全性が高い、と判断するようです。

もちろん、他にも乗員の脱出性ですとか、ペダルの室内への突き出しですとか、色々な測定項目が書かれていますが、大まかに言うと乗員加速度が最大の評価基準になっています。

A車よりもB車の方が乗員にかかる加速度が小さければ、「B車はA車よりも衝突安全性が高い」ということになるのです。

しかし、ここで疑問です。55kmの衝突安全性試験で良い成績を修めた車を、もっと高い速度、例えば60kmで衝突させたときにはどうなるでしょうか。

現代の車は全て、衝突安全性を確保するため、クラッシャブルゾーンを効率的に潰しながら衝突のエネルギーを吸収するという方法を採っています。

乗員の生存空間であるキャビンスペースの変形を抑えながら、その前後のスペースをできるだけ完全に変形させて衝突のエネルギーを吸収し、乗員にかかる加速度を小さくするわけです。

ここで、同じ力で少ししか変形しない硬いスポンジと、大きく変形する柔らかいスポンジの上にタマゴを落とした時のことを想像してください。言うまでもなく、ここで言うスポンジは車のボディー、タマゴは乗員です。

タマゴを落とす高さを増していったとき、先にタマゴが割れるのは硬いスポンジの方でしょうか、柔らかいスポンジの方でしょうか?

一見、硬いスポンジに落としたときの方が先にタマゴが割れそうですが・・・。

確かに、スポンジの厚さが無限であれば、それで正しいと思います。ところが、現実にはスポンジの厚さは有限で、その下には固い床があるのです。

では、もしも、床の上に置かれた厚さが5cmのスポンジの上にタマゴを落とすとき、硬いスポンジと柔らかいスポンジとで、どちらのタマゴが割れずに済むでしょうか。

例えば5cmのスポンジで衝撃を吸収できる範囲の高さからタマゴを落としたときには、柔らかいスポンジのほうがタマゴに与える衝撃は少ないでしょうけれど、それを越えた場合には柔らかいスポンジではタマゴが床に接触して、衝撃は急に強くなるわけです。

一方、硬いスポンジの場合、卵に与える衝撃は初めから比較的大きめでも、柔らかいスポンジと比べて、更に高いところから落とすまで、卵が床に接触することはありません。したがって、急激な衝撃の増加もありません。

車に戻って考えてみると、いかがでしょうか。与えられた試験条件に於いて、最もクラッシャブルゾーンを有効に潰し、乗員にかかる加速度を小さくした車の安全性が高いと評価されます。(ライドダウン効果)

非常に分かりやすい評価方法ですが、「与えられた試験条件に於いて、最もクラッシャブルゾーンを完全に潰した」というところが気になりませんか?

では、先ほどのタマゴの話と同じように、「与えられた試験条件」以上の衝撃を受けたときはどうなるのでしょうか。

はい、「急に衝撃が大きくなる」可能性があるでしょう。

つまり、55kmの試験で衝撃が小さかった車が65kmの試験でも衝撃が小さいかどうかというと全く別の話になりそうです。

逆に、55kmの試験では衝撃が少々大きかった車でも、クラッシャブルゾーンに余裕があれば、更に上の65kmの衝突でも同レベルの衝撃に抑えられる可能性があるのではないでしょうか。

現状は55km試験が一般的なので各社その条件での試験結果しか公表していませんが、もしも更に高い速度でのデータが公表されれば、車ごとの順位は全く変わったものになる可能性があります。

もしも一部に「55km/h衝突試験スペシャル」とでも言うべき車両が存在したとしたら、現行の55km/h衝突試験では最高の安全性能をたたき出すものの、それを微かに超える速度では急に危険性が高まるかもしれません。

逆に、更に高い速度までの安全性を確保しようとした車両では、その車両の衝突安全性にとって通過点でしかない55km/hという速度での衝突試験の評価が、必ずしも最高等級になることはないかもしれません。

以上、私が考えたことが正しいかどうか分かりませんが、本質的にはそれほど外れた話でもないと思います。

なかなか評価データの判断というのは難しいものですね。

« まじめにやって・・・ | トップページ | ポーン »

」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/171129/14100857

この記事へのトラックバック一覧です: 衝突安全性試験のこと(試験速度条件):

« まじめにやって・・・ | トップページ | ポーン »

2018年4月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
無料ブログはココログ

ottoの本棚

  • 徳永幾男: セイコーダイバーズウオッチ進化論 (ワールドムック 1078)

    徳永幾男: セイコーダイバーズウオッチ進化論 (ワールドムック 1078)
    セイコー社が普通に出しているであろう資料を継ぎ接ぎしただけの本。内容に伝説を求めてもパッキンについてもダイバーからの手紙についても同じことを繰り返し書くばかりで何の面白味もない。いかにネタが無いのかを自分で白状している感じ。 技術的な意味での興味からも全く期待はずれ。PTFEの方がガス(He)透過率が低いというデータを載せながら、何故PTFEではない材料を採用したのかの説明もない。(所要最小面圧が理由だろうが) そして、面白くない一番の理由は他社や他社製品との具体的、定量的な比較がないこと。他製品に対する優位性があってこその「進化」だろうに。件のダイバーの手紙に「どれもこれもダメ」と書いてあったという問題提起の話だけで、実際のHe飽和潜水でセイコー製がその問題を解決したのかどうかの裏付けがない。 著者は実績ある時計専門の機械屋さんのようだから出版に当たって名前だけ使われたのだろうと思わずに居られない。 最近で最も損したと思った本に認定。 (★)

  • ウイダー: ウイダー・トレーニング・バイブル (ウイダー・トータル・フィットネス・シリーズ)

    ウイダー: ウイダー・トレーニング・バイブル (ウイダー・トータル・フィットネス・シリーズ)
    10年くらい前に買った本書を再読。紹介されているトレーニング種目は多く、運動競技別のメニューも紹介されている。また、反復可能回数を基準にした重量設定の方法も簡単に紹介されているが、「漸進性の原理」にはほんの一言二言触れているだけで、トレーニングが進んだとき、どのようにウェイトの重量を増やせば良いのかについては殆ど記載がない。唯一、「導入段階のトレーニングプログラム例」の中に「最終セットで15回出来るようになったら2.5kg増す」というような記載があるのみ。確かに重量設定の方法を逆読みすれば目的とする効果が得られる反復回数となるように重量を増やして行くべきということは分からなくもないが一般には分かりにくいだろう。明らかに初心者向けの書籍なのに、その点に関するガイドが不足していることに疑問を感じる。厳密に言うと用い方が違うとしても、8×3法なり5×5法なりのような、分かりやすいウェイト重量調整の判断基準が欲しい。ウェイトを増やして行くこと自体が目的にかなり近いことであって、他のことはその手段なのだから、ウェイトの増やし方には章をひとつ割いても良いくらいだと思うので。 (★★)

  • クリス アセート: 究極の筋肉を造るためのボディビルハンドブック

    クリス アセート: 究極の筋肉を造るためのボディビルハンドブック
    内容は運動強度と栄養摂取に関する原則に特化しており、個別の運動についての詳細は含まれていないので注意。挿絵以外に図表は含まれない。 (★★)

  • マイケル ルイス: フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち

    マイケル ルイス: フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち
    読書中

  • バートン・マルキール: ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉 ―株式投資の不滅の真理

    バートン・マルキール: ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉 ―株式投資の不滅の真理
    主張には一貫性があり差し替えられた最新のデータに対しても矛盾がない。最高のリターンを得るためにベストな方法ではなく、普通の人が十分な(とは言えかなり良い)リターンを得られる可能性が高い方法を明確に示している点で個人投資家にとって最良の書ではないだろうか。株式、債券の範囲で投資を始めるなら、まずは歴史に裏打ちされたこの本を読んでからにすべき。投資窓口で投資商品を販売する方々も、この本を読んでから個人投資家に接すれば無駄な問答が無くなるように思う。まあ、そんなことをしたら彼らが自己矛盾に苦しむことになるが。 (★★★★★)

  • フレデリック ドラヴィエ: 目でみる筋力トレーニングの解剖学―ひと目でわかる強化部位と筋名

    フレデリック ドラヴィエ: 目でみる筋力トレーニングの解剖学―ひと目でわかる強化部位と筋名
    主な筋肉については起始と停止位置がその筋肉単独の状態で図解されているが、せっかくなら運動状態の図についても、その運動が主題にする筋肉だけを単独で図示してほしかった。その方が、その筋肉がどのような方向に力を発揮するのか、どのような方向に動作すれば筋肉に効率よく刺激を与えられるのかが分かりやすくなるように思う。筋肉の起始と停止位置が分からない図であれば、なにも表皮を剥いで筋肉を露出させた状態で運動の様子を描く必要がないのでは。 (★)

  • 荒川 裕志: プロが教える 筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典

    荒川 裕志: プロが教える 筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典
    筋肉が骨格と共に各々単独で図解されており筋肉の骨格への付着(起始,停止)位置が分かりやすい。図を見ればどのような動作が筋肉に刺激を与えるのかが想像できる。同シリーズのトレーニング編にも興味が湧いた。 (★★★★)

  • ウイダー: ウイダー・トレーニング・バイブル (ウイダー・トータル・フィットネス・シリーズ)

    ウイダー: ウイダー・トレーニング・バイブル (ウイダー・トータル・フィットネス・シリーズ)
    (★★★)

  • 世界文化社: Octane日本版 Vol.12 (BIGMANスペシャル)

    世界文化社: Octane日本版 Vol.12 (BIGMANスペシャル)
    素敵なグラビアを堪能。 (★★★)

  • 世界文化社: オクタン日本版特別編集 VANTAGE (BIGMANスペシャル)

    世界文化社: オクタン日本版特別編集 VANTAGE (BIGMANスペシャル)

Shops

  • Ride Out KAWASAKI 専門店
    友人である長谷川氏のバイクショップ。 杉並区善福寺一丁目青梅街道沿い。 KAWASAKI中心に取り扱い。

家作りリンク

家作りガイド

  • 住まいの水先案内人
    家作りに関する技術的な解説、資料、コツ、そして注意点が盛りだくさんです。非常に多くの内容が含まれていますが、それらが分かりやすく整理されています。このサイトを隅から隅まで読んで家作りに着手すれば余程のことがない限り致命的な問題が発生するようなことは避けられるのではないでしょうか。特定の工法、業者に傾いた解説も見当たらず、非常に良いサイトだと思います。
  • 建築家による1000問答の建築よろず相談
    基本的には建築に関係する相談のサイトです。建築士等によるQ&Aが充実しています。運営主体の性質上、建築士による建築計画・監理を強く推し、そのメリットを強調しています。

トレーニング

  • AthleteBody.jp
    このサイトのおかげで腹筋を割ることができました。無料サイトであるにも関わらず「ダイエットと筋肉トレーニングにおいて本当に必要なこと」が強調され、非常に有益な情報が提供されています。 夏前になると「6パックを手に入れる」的な特集を繰り返し組んで、色々な運動を羅列しただけの雑誌を買うのがバカバカしくなります。 多くの雑誌では、運動の優先度、そして何より時間軸でのトレーニングの進め方が載っていません。 「10回繰り返せるくらいの負荷で3~5セット行う」という書き方をしていることが多いのですが、「じゃあ、今日50kgのウェイトで10回3セット出来たとして、次回もその次も同じようにすれば良いの?」という疑問には答えてくれないことが殆どです。 読者がそう言った疑問を持たなければ毎回同じ負荷で同じことを繰り返し、つまり体は変わらない、ということになるわけで、記事として非常に中途半端であり不誠実です。 全員が6パックになってしまうと雑誌が売れなくなるので大事なところを端折っているのかも知れませんが。 このサイトでは、「行うべき基本」はシンプルで明確なので実行も容易。非常にお勧めです。