ラム圧
スピードの出ている乗り物の窓から手を出したりすると、かなりの風圧を感じます。この勢いをレシプロエンジンの吸気に利用したらずいぶん効率が良くなるのではないか、ということで車の世界でも色々なものが売られていますよね。一般にラム○○と呼ばれているようです。
ラム圧(動圧)は速度の2乗で効いてきますから、例えば300km/hぶんの風速があれば100km/hの場合の9倍の圧力が得られる計算になります。高速道路で窓から手を出しただけでもかなりの風圧を感じるわけですから、F1などの世界ではかなりの効果が期待できそうです。実際、超音速で飛ぶ飛行機では、コンプレッサーを持たずに動圧だけで運転を維持するラムジェット(ramjet)というものもあるくらいです。
では、我々が車両を運転する範囲の速度でのラム圧というのは、いったいどれほどのものなのでしょうか。
見直さなければならないのが恥ずかしいんですが流力の教科書を見直すと、
P = γV2/2
の式に、SI単位で各パラメーターを入れてゆけばPaで圧力が求まります。
とりあえず100km/hのときの値を求めてみると・・・、
498.9Pa(!)
うわ、すごそうな圧力!って、違います。
単位を分かりやすくkgf/cm2になおすと、たかだか0.005kgf/cm2に過ぎません。ロープレッシャーターボでも0.4kgf/cm2くらいはかけますから、圧力が2桁も違います。
200km/hまで速度を上げると圧力は0.02kgf/cm2まで上がりますが、NAの場合でも吸入圧は最初から1kgf/cm2ある(体積効率は96%くらいだとか)わけです。ですから、その速度で得られる吸入空気量の増加(≒出力アップ)はNAの場合で多くても2%くらいだということです。
もともと過給のかかっているターボエンジンだったら当初の吸入圧が全圧で2kgf/cm2近いわけですから、この空気量の増加割合はさらに小さなものになります。
300馬力クラスのエンジンで数馬力の差。
市販の用品はかなりの値段で売られているようですが、音のフィーリング以外に、この差を「体感」するのは難しいかもしれませんね。
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コメント
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ottoさん 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
ん~。あいかわらず深い話題ですね。
200km/hで圧力は0.02kgf/cm2ですか・・・。社外でポンと付く物では効果はなさそうですね。
バイク界の話になるんですけど、一時はワークスなどでもラムエアボックスが流行ってましたが、最近見ないような気がしますね。。。
下手な作りのボックスだと、走行中にラム圧で爆発(?)することもあるそうなので、きちんと設計すれば効果はあるのかな、と思います。でも美味しい所がピンポイントなのかもしれませんね。功罪を追求した結果廃れていったのかも。
ここ数年間雑誌類はほとんど読んでいないので曖昧な話ですが、今は『そぉっと』吸わせるのがイイのだとか。
投稿: shalo | 2007年1月 4日 (木) 22時52分
shaloさん明けましておめでとうございます。こちらこそよろしくお願いいたします。
計算が間違っていないと良いのですが、公道で体感できるかどうかは別として、2%でも効率が上がる可能性があるなら、競技の世界では使いたくなりますよね。
2輪エンジンの制御については全然知らないんのですが、キャブだと制御が難しいかも知れませんね。Lジェトロのインジェクションなら大丈夫でしょうか。そのへんが、「そおっと吸わせる」に繋がるのかなと想像しました。
こんど、車からピトー管を出して測ってみましょう!
投稿: otto | 2007年1月 5日 (金) 12時49分