車のエンジンのこと
私が義父から譲り受けた車のエンジンは西独BMW製のV型12気筒です。
V12というのは車のエンジンとしてはある意味で一つの頂点です。セダンに積まれた場合は「完全バランスの直6を二つつなげたウルトラスムースネス」「スムースな力強さ」というのが売り文句になるようです。
事実、このエンジンでも中速領域でのスムースでグワっと湧くようなトルク感は特徴的です。回りすぎることなく、スムースで力強いエンジンです。5Lの排気量から発生する出力とトルクはカタログ値で300ps/45.9kgf・m(※1)。登場したのは日産のL型がまだまだ現役で活躍していたころですから、義父がこの車を手に入れたころは、まさにフラッグシップに相応しい性能だったでしょう。
始動のときのクランキングの音も特徴的です。V8までのエンジンが「キュルキュルキュル」という音を出すのに対して、V12はその爆発間隔の狭さからか「ウーーーン」という唸りのような音を発します。(知らないで聞くと壊れているようです。聞くところによると船外機の2ストロークV6エンジンも同じような音だとか。)
しかし、そのエンジンも登録('93)から13年を経過すると、周りの進歩の中で特別なものであり続けることはできないようです。
走行が70,000km台と年式のわりに短めなこともあって、300psという絶対的な出力は維持されているよう(※2)ですが、アイドリング時の振動と高回転でのゆるいフィーリングには時代を感じます。
室内で感じるアイドリング時の不規則な振動については、燃焼がばらつく昔のエンジンの特徴でしょうか。経年劣化(エンジンマウント等)の影響もあるでしょうけれど、おそらくこれが当時のレベルなのではないかと感じます。(メンテナンスは施してあるので)
(本件、後のメンテナンスで明確な改善を見ています。詳細についてはこちらを。)
高回転での緩さは経年変化とはあまり関係ないので新車の時からのものだと思いますが、これはエンジンの剛性の問題でしょう。4,000回転くらいまでは精緻な感じで回るのですが、そこから上では「でゅいーん」という感じで何かが振れ回るような低周波の振動を感じます。
この「BMW製のV12」の使い方としては、「踏まず急がず」の気持ちで、中速の太いトルクを味わうのが正解だと思います。もともと、そういう目的で作られたエンジンなのでしょから。間違っても「レブリミットまでタービンのように回る」というメーカーの表現を、現代のレベルで考えてはいけないと思います。(笑)
しかしこういうものを見ると、工業製品の進歩というのは本当にすごいものだと感心します。確かにV12にしかない独特の感覚というものはありますが、単に車の動力としての評価であれば、一つの時代のフラッグシップの性能をはるかに上回る製品が、今では普及レベルで流通しているわけですから。
きっと、メーカーの技術者の方の涙の残業のおかげなのでしょう。感謝。
(※1) 最近の車と較べても、高速領域での加速力は未だに現役です。
(※2) 圧縮比が低く(≒8.6)設定されているので、タービンブローしたターボ車で走っているようなものです。とうぜん、燃費は良くありません。せっかく圧縮比が低いのですから、TD-04あたりを各バンクに取り付けると楽しそうです。(笑)
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コメント
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細かい事ですが、西独ではなく独逸では?
93年製だし。。。(笑)
投稿: miya | 2006年5月24日 (水) 17時31分
miyaさんこんにちは。
そこまで気にしていませんでした。確かに”独逸”の時代ですね。統一は1990年でしたか?
投稿: otto | 2006年5月24日 (水) 19時18分
こんにちは、92年型のV12に乗っている「たけ」と申します。 よくこの頃のV12はアイドリングがお行儀が悪いと言われるのですが、実は適切なメンテナンス整備がされていない事による原因が殆どです。 新車時から2-3年程度でディーラーで定期整備を受けていたオーナーでも同様でディーラーそのものが5-6年程度経過後の車両状態維持について十分な経験知識を積まないうちに車両の固体数自体が減ってしまい現在では適切な対応を受けることは殆ど出来ない状況にあります。 私や友人はドイツ本国のマイスターからの細かな情報をもとにDIYで整備対応しており非常に安定した機関状態にあります。
多くの方のV12を見てきましたが整備前の状態で完調の機関はまず見当たりません。
投稿: たけ | 2006年8月28日 (月) 04時36分
たけさん、コメントありがとうございます。
そうですね、おっしゃるとおり、ディーラーも既に当時の記憶がない、もしくは蓄積されていないというような状態だと感じました。
ベントレーのマニュアルは買ったものの、そもそも部品の入手から難儀している状況です。また、通勤車だったこともあり、土日で元に戻さなければならないという制約もあって、危険な作業は避けてきました。(笑)
ここで足車が手に入ったので、これから本格的にいじってみるつもりです。
詳細、ご教示いただければ幸いです。
投稿: otto | 2006年9月14日 (木) 21時27分